読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

呼び水

日記です。

島のこと。

 

水辺のこととか他のことを詰め込んで日記を書きます。わたしはかなり忘れっぽいので、読み返した時に色々思い出せたらいいなと思って。

このときの日記です。

 
晴れると聞いていたので、朝の4時に起きてひっそり準備をして海に向かった。布団に潜っている間にちいさな地震があったような気がする。夢か気のせいだったかもしれない。非番で昼寝をしすぎたせいか、出かけるのが楽しみだったせいか、前日の夜はあまりよく寝られなくて、出かけるほんの2時間前くらいまで夜更かしをして起きていたと思う。
夜が明けてきたのが窓から確認できたので、半分寝ぼけながら支度をして家を出た。最寄り駅までの道で見た朝焼けがあまりにも赤く美しく、見とれて危うく始発に乗り遅れるところだった。電車の中では朝陽を反射する海や川と、人が少なくTLの流れの緩やかなTwitterを交互に眺めていた。座席の下からあったかい空気が出てきて眠くなる。同じ車両にはわたしを含め3人しか乗っていなかった。なんとなくだけれど、Twitterで見かける人も、電車に乗っている人たちも、社会人も学生も、新生活が始まったばかりの人たちは皆薄く発光しているような気がする。少し羨ましい。

f:id:aomidorinomizu:20170414110934p:image

 
よく見に行く海辺の駅よりもう少し先の駅で降りた。そこで降りたのはわたしだけだった。このあたりに大きな津波が来る前は、駅と海岸は隣り合わせで、夏になると海水浴客で駅が賑わっていたそう。無人の駅でポスターラックから目当ての島の案内図をいくつか貰う。地元の小学生たちの手づくりらしい、薄いピンクの用紙に刷られた地図が力作でとても良いと思った。

高台の新しい駅から少し離れた海辺に向かうまでの道で、白いラブラドールレトリーバーを散歩しているおばあさんとすれ違った。おばあさんは犬に引きずられて傾いたまま、楽しそうに挨拶をしてくれた。ラブラドールレトリーバーの横っ腹が朝陽を反射して、さらに白くピカピカに見えた。それから、小さな運河の上を渡った。運河を見るのは生まれて初めてのことだと思う。ドキドキしながら何者も通らない穏やかな運河をしばらく見つめていた。橋の名前が書かれている石は、すみっこでぽっきりと折れて仰向けに転がっていた。橋を渡った先は橋の手前よりもさらにまっさらで、盛り土が目立つ。

f:id:aomidorinomizu:20170413175416j:imagef:id:aomidorinomizu:20170413175441j:image

 
朝ごはんを海辺でのんびり食べようと思っていたのに、食べものを全て家に忘れてきたことにそこで気がつき、かなり落ち込んだ。おやつのハッピーターンも忘れてきた。そして、調べておいた島唯一のコンビニは早朝はやっていない。海風はとても冷たく朝陽は眩しくお腹はぺこぺこだった。
ひもじさをこらえて歩いてたどり着いた海岸は、牡蠣の養殖場が近いからか、おびただしい量の牡蠣の殻が転がっているようなところだった。こんな量が波にさらわれて、漁師さんは採算がとれるのかとちょっと心配になってしまう。わたしは牡蠣が好きなので、値段を想像してみたけれど、とても想像しきれずくらくらした。

f:id:aomidorinomizu:20170413193511j:imagef:id:aomidorinomizu:20170413193842j:image

波打際には牡蠣のほかにもたくさんの貝殻が転がっていた。きっとこの辺りは良い漁場なんだろうな。大きなハマグリをこんこん蹴りながら歩いた。歩いている内に貝殻が開く。やっぱり中はすっからかんだった。貝殻を蹴るのをやめて砂浜の乾いている部分を歩くと貝殻が砕けてパリパリと乾いた音がする。海はまだ、朝陽で水平線が見えないほど眩しい。 帽子を被ってきて良かった。眩しいのはあまり得意じゃないかもしれない。

f:id:aomidorinomizu:20170413194102j:imagef:id:aomidorinomizu:20170413194126j:imagef:id:aomidorinomizu:20170413194206j:imagef:id:aomidorinomizu:20170413194238j:image

 

しばらく海岸沿いを歩いた。もうずいぶんとたくさん歩いたような気がするのに、グーグルマップや手元の地図を見めみると、まだ島のほんの入り口のところのようだった。それまでウミネコの鳴き声と風と波の音しか聞こえなかった浜辺で急に大きな音が聴こえてきた。よく聴けば船のごうごうという荒々しい音と、西野カナらしき明るい歌声だった。どうして漁村の早朝に?と戸惑うわたしをよそに、島と島の間から一隻の船が飛沫をあげながら港に入ってきた。西野カナの曲をかき鳴らし、船はわたしの目の前を通り過ぎて、橋の下をくぐり川に抜けていった。さっきの運河にここからつながるのか!発見だった。あっという間に西野カナは遠ざかっていった。次々と船が入ってくるものの、最初の一隻以外からは歌は聴こえてこなかった。ごうごうとモーターの音と水をかき分ける音ばかりだ。あれも夢か気のせいだったのかもしれない。

 
一旦海岸から離れて、引き続き島を歩く。軽トラバス軽トラ軽トラ乗用車 大型トラック軽トラ軽トラ。島の人たちはほとんど皆が車で移動するらしく、平日の朝によそのものがふらふら歩いていると少し不思議そうな顔をされる。こんなとき、ラブラドールレトリーバーが一緒に歩いてくれたらとても頼もしいだろうな。白くて大きくてピカピカの。
歩いているうちにようやく空気が暖かくなってきて、気がついたら島の中心部に着いていた。ピンクの地図に載っていた、地元の小学生イチオシらしい山を登ることにした。小さな山で、小学生が授業で気軽に登れるくらいのものだと思う。でも運動不足な社会人には、空腹のダメージもあいまってすこししんどかった。あたりを見回しても食べ物を買えるような店はやっぱりない。

f:id:aomidorinomizu:20170413194557j:image

[悲しみに暮れるリス]

f:id:aomidorinomizu:20170413194632j:imagef:id:aomidorinomizu:20170413194646j:image


その小さな山は比較的整えられているので、松の木の間を抜けるように階段や土手を登ると15分ほどでてっぺんに着く。山頂からはぐるりと一周島の周りを見回すことができた。

f:id:aomidorinomizu:20170413194745j:imagef:id:aomidorinomizu:20170413194759j:image

[さっきまでいた浜]

f:id:aomidorinomizu:20170413194820j:imagef:id:aomidorinomizu:20170413210940j:image

壮観。さっきまで歩いていたあの牡蠣だらけの浜も遠くに小さく見える。だいぶ遠くまで来たな。高いところから見ると、丸まった波打ち際がとても綺麗だった。すこし目線をずらすと太平洋が水平線まで白く光っていて、 雪原のようだった。

f:id:aomidorinomizu:20170413194843j:image

周りに誰もいないのをいいことに、荷物を枕にこっそり四阿のベンチで横になる。お腹が空いていたけれど、清々しい風が吹き抜けてとても気持ちよかった。すこしだけ寝ていたかもしれない。

食べ物を求めて人里に降りる熊の気分で下山したところで、なにかの事務所の隣にある自動販売機を見つけた。駆け寄ってあたたかいミルクティーを買う。嬉しすぎて長いため息をついた。あまいしあったかいしとてもおいしい。

ようやく人心地ついたので、落ち着いてその後の行程を考える。地図によると島にはいくつかの海岸があって、そのどれもが魅力的だったが、時間のことを考えると回れるのはあと1つか、多くても2つというところだった。
ひたすらまっすぐ、島の真ん中を縫うように進む。道沿いや山の高いところ、いたるところで椿が咲いていた。わたしはついこの間まで山茶花と椿の見分けがついておらず、実家の山茶花を椿だと思っていた。今回はわかった。島のそれは椿。

民家の庭の菜の花畑や花壇に植えられた水仙を横目に海岸を目指す。黄色い花は春の野でもよく目立つしとてもかわいらしい。島の桜はまだ咲いていない。藤や桜の時期に来てもきっと素敵だろうな。


2つめの海岸は、最初のところとはまた随分様子が違う小さな海岸だった。牡蠣の殻は見当たらず、小さな貝殻がいくつか打ち上げられている。堤防のそば、かなり長い竿で釣りをしているおじいさんがいた。端の岩場がやけに黒いと思ったらびっしりと小さな貝がついている。お腹が空いていたので、茹でて食べたらきっとおいしいだろうな。引き潮の時間だったのか磯の岩がだいぶ露出していたのでしばらく観察していた。

f:id:aomidorinomizu:20170413211404j:imagef:id:aomidorinomizu:20170413211625j:imagef:id:aomidorinomizu:20170413211428j:imagef:id:aomidorinomizu:20170413211600j:image

 

 それから、浅瀬に波が打ち寄せるたびに色とりどりの海藻がふわふわ揺られてていてなんだかかわいい。とてものどかだった。

f:id:aomidorinomizu:20170413211510j:image

f:id:aomidorinomizu:20170413211533j:image

f:id:aomidorinomizu:20170413211210j:image

f:id:aomidorinomizu:20170413211245j:image

 [おいでよ海藻の森]


いつまでもいつまでも浅瀬で光る水や海藻を見て居たかったけれど、夕方から少し用事があったので早めに引き上げることにした。調べたところ、どうやら島と駅とを結ぶ循環バスがあるようだけれど、近場のバス停がどこなのかよくわからなかった。わたしの居た海岸の近くに団地があって、そこにもバスは停まるらしいのだけれど、歩けども歩けどもそれらしき団地は見当たらなかった。結局、島の真ん中、山の麓に分かりやすいバス停がありそうだったので、歩いて戻ってそこからバスに乗った。

f:id:aomidorinomizu:20170414110556j:image

[謎多き木]

昼前のマイクロバスの乗客はわたしだけで、ひどく静かだった。うつらうつらしている間に、高台の駅についていていたと思う。次の電車まで20分ほどあったので、朝は開いていなかった駅の近くの小さな売店に寄る。海苔や牡蠣を原料とした加工品がほとんどで、すぐに食べられそうなものはほとんどなかった。小さなバームクーヘンを2つ買って、すぐに1つ食べた。あっという間になくなってしまった。


朝から計画していた通りに、電車で少し戻ったところの温泉で日帰り入浴をする。うっかり受付時間より早くついてしまったので、ぼんやりと川を見ていた。その温泉は海が見える露天風呂が有名なところで、以前にも何度か泊まったことがあって気に入っていた。正午頃にははすっかり晴れ渡っていたので、熱いお湯に浸かりながらゆっくりと光る海を見た。一旦温泉からあがって、テラスでぼんやり水分補給をした後に宿の庭園を散歩する。

f:id:aomidorinomizu:20170414105434j:imagef:id:aomidorinomizu:20170414105445j:imagef:id:aomidorinomizu:20170414105514j:image

[とんがりチャペル]

f:id:aomidorinomizu:20170414105729j:imagef:id:aomidorinomizu:20170414110507j:imagef:id:aomidorinomizu:20170414105637j:image

[1匹しか見つけられなかった鯉]

 

水が張られたままのプールや鯉のいる池を眺めていると、少し先の道沿いにたくさんネモフィラが咲いていることに気がついた。

f:id:aomidorinomizu:20170414105321j:imagef:id:aomidorinomizu:20170414105328j:imagef:id:aomidorinomizu:20170414105344j:image

 

実物を見たのは初めてだったけれど、いつか見たいと思っていた花だったのですぐに分かった。日陰と日向でずいぶんと印象の変わる花だった。背が小さくてかわいい。もう一度露天風呂に浸かりにいく。今度は貸切だった。マッサージチェアーまで満喫した後のんびりと支度をして帰宅した。帰りの電車は乗るなり眠ってしまったのであっという間だった。自宅で40分ほど眠って、夕方、スーツに着替えて仕事の用事を済ませに街まで出かけた。用事は1時間とかからずに済んだけれど帰り道は倦怠感でかなりふわふわしていた。果物屋さんのジューススタンドでレモンジュースを買ってすぐ飲み干した。

f:id:aomidorinomizu:20170414105842j:image

[疲労回復にいいらしい]

 

朝方身体を冷やしたからか、疲れからか、寝る前に少し喉がイガイガしていた。気のせいだと思ってすぐに寝たけれど次の日にはしっかり喉からの風邪をひいていた。昨日買ったバームクーヘンがうまく喉を通らなかったので牛乳で流し込んだ。


本当は島のもう少し奥の方に見たいところがあったのだけれど、それから船に乗ろうとも思っていたのだけれど、体力と時間を考えて次回にした。温泉までが計画だったので。地図で見る島は小さく、でもわたしには広かった。予定外に山に登ることができて、島の周りをぐるりと見回せたのでよかったと思う。あの山にはまた時間や季節を変えて登りたい。今度はちゃんとおにぎりとお茶を持って、忘れずに持って、山頂で食べたらきっととてもおいしいと思う。山頂でご飯を、海辺でおやつを食べる。想像したらまた島に行きたくなってきた。1人でも2人でも、探検をしたらきっと楽しいと思う。次回は乗合バスをうまく使って色々な海岸に行きたい。

終わりです。また時々書きます。

広告を非表示にする