呼び水

日記です

雪 川 温泉

f:id:aomidorinomizu:20180110233625j:image朝5時ごろ、職場のベッドで目がさめた。暖房をつけたまま寝てしまったので目がひどく乾燥している。半分寝ぼけながら前の晩にもらった明太子のおにぎりを食べ身支度をする。6時くらいから仕事をはじめた。日が出る前はやっぱり空気が冷たい。仕事中ふと窓の外を見ると川が金色に輝いていて美しかった。土手や田んぼにうっすらと雪が積もっている。少し日が照ればすぐに溶けてしまうくらいうっすら。そういえば年が明けてから、あれだけたくさん川にいたガンたちを見かけていない。今はどこの水辺にいるのだろう。ガンと同じくらいにやってきた白鳥たちは広い田んぼの真ん中に座り込んでいた。雪よりも白い。冬でも目立つ大きい鳥。


眠気に抗うために、今日は仕事が終わったらどこに散歩に行こうかなと頭の端で考える。明日も仕事だからそう遠くには行けないけれど、知らない街をぼんやり歩きたい。どこかに散歩に行きたいなと思う時はだいたいみっつよっつある候補の中から、天気と気分とあと電車やバスの乗り継ぎを考えたり考えなかったりして飛び出す。

特にトラブルもなく仕事が終わったので、大きい駅でおやつを仕入れて電車に乗る。ふくらはぎの後ろがヒーターであたためられて、あっという間に眠くなる。コートを膝にかけるとこたつのようにぬくくていい。膝の上のリュックを抱きしめ終点まで眠る。終点からは別の列車に乗り換える。車体に雪をくっつけ白い煙をもうもうとあげながら走るディーゼル車に乗ると、雪国に来た気持ちになる。なんとなく。乗る前までは終点まで眠ろうかと思っていたけれど、気が変わって、その少し手前で降りてみることにした。到着時間を調べて、その少し前にアラームを設定し再び眠る。結局アラームが鳴る前に目が覚めた。目が覚めると雪景色だった。


小さな駅で降りて川沿いの道を歩く。この辺りは、思っていたほどの雪はない。ただ溶けてシャーベット状になった雪が靴の中に入り込んできてとても冷たかった。こんなことなら職場に長靴を置いておくんだった。しもやけにならないといいなと思う。子どもの頃はしょっちゅうしもやけをこさえてべそをかいていた。

川辺は人はあまりいなくて、ただ熟れきった柿をつつく鳥たちがギューイギューイと鳴くので賑やかだった。こんなに寒かったらあの柿はアイスみたくなってるんじゃなかろうか。足の冷えは諦めてずんずん歩く。のぞいてみようと思った店は軒並み定休日だとか臨時休業だったので、とにかく川を見ていた。なんとなくお堀っぽいなあと思って調べてみたら、あながち外れでもないようだった。かつてのお城のお堀でありつつ、今現在は農業用の水路でもあるらしい。

 

城址の公園まで登っていく気力はなかったけれど次の電車までまだまだ時間があったので、由緒ある庭園をのぞく。溶けかけの雪がぼさぼさ頭上から落ちてくるのでマフラーを広げてほっかむりのようにして歩く。庭園の池はほとんど凍りついている。雪かきをしているおじさんがいたのだけれど、かなり勢いよく、あつめた雪を池の端に放るので笑ってしまった。庭園にはいろんな樹木が植わっていたのであたたかい時期にまた来たい。


足の痛さがどうしようもなくなってきたなで、さっき降りた駅のひとつ先の駅まで歩いて待合室にこもる。出かけに買ってきた燻製たまごふたっつとあま酒。昼食なんだかおやつなんだかよくわからないけれど、あたたかい場所でお腹に物を入れると気持ちが落ち着く。手持ち無沙汰なので市で作っているパンフレットをめくる。マガンのゆるキャラがかわいらしい。パタ崎さん。県北にはいいゆるキャラがたくさんいるな、ねじりほんにょとかパタ崎さんとか。絶妙だ。

 

そのうちまた列車がやってきたので乗り込んで、ロングシートの中でもヒーターの吹き出し口の近い席に座る。足が凍りついたように冷たい。温泉のことしか考えられなくなってきた。
15分かそこらで温泉街の最寄駅に着く。この間きたのは夏前だったかな。たしか木苺がなる季節だったと思う。その時は沼をみてボートを漕いで温泉に入った。季節が変わって雪を被った山は青白く美しかったのでしばらくぼんやりと眺めていた。坂道を歩いて山がきれいに見える場所を探したけれど何より足を温めないとと思い出し公衆浴場に向かう。どうにかこうにかたどり着いた温泉でしっかり温まったので、併設の休憩スペースでひと休みする。冷えから解放され安心したのか一気に眠くなってくる。畳に転がりコートを被ってひと眠りする。気づけば30分ほど昼寝をしていた。
外に出て少しした頃雪が降りだした。傘が必要なほどではないけれどマフラーを念入りに巻くことにする。土産物屋さんをのぞきながら温泉街を歩く。あらゆる場所にこけしをモチーフとしたものがあって楽しい。お気に入りはこけし公衆電話。でっかい。そういえば実家の蔵にはたくさんのこけしが眠っていたけれど、あれはどこのこけしなんだろう。鳴子?土湯?今度見てみよう。

お餅屋さんのふかふかの栗団子を食べたらしょっぱいものが食べたくなったので、ちいさな食堂で山菜きのこうどんも食べた。うどんやもちやだんごの類はどこに行ってもつい食べてしまう。ストーブの天板からはみ出すようなでっかいやかんがあって、ちょっと欲しいなと思った。最後にもう一箇所、以前に立ち寄って気に入っていた公衆浴場で身体をぽかぽかにして帰りの電車に乗る。


帰りの電車もあっという間だった。電車やバスでの移動は時間やルートや乗り継ぎの制限があるけれど、ぼんやりしていても遠くまで行けるし疲れ切って眠ってしまってもちゃんと帰ることができるからありがたいなと思う。
眠って、乗り継いで、また眠ってとしているうちに大きな駅まで帰ってきた。駅前の大きな本屋さんに用事があったのを思い出して寄ってみたけれど、目当ての本は在庫がなく残念だった。そういえばと思ってもう一冊、以前から読んでみたいと思っていた本を買って帰る。まだ少ししか読んでいないのだけれど、そのロシアの旅行記を読んでいたら日記が書きたくなって、今こうして日記を書いている。そういえばパタ崎さんはシベリア出身らしい。f:id:aomidorinomizu:20180110233600j:image